皮膚呼吸?脱毛?発毛?抜け毛を無くして発毛させる?
今号の問題提起!
皮膚呼吸・脱毛・発毛・抜け毛を無くして発毛させるって、表現がおかしくないですか?
世間には売り言葉がたくさんあります。物を売ったり、サロンに来て欲しいが為に「煽るような言葉」もたくさんあります。
単に煽っているなら、「またまた大げさなことを言って」で済みますが、言葉の意味を捻じ曲げたり、事実や現実と違う言葉で煽り始めると「それって詐欺じゃないの?」と思ってしまいます。
今号では、美容や育毛の世界でよく使われる、言葉の意味を捻じ曲げたり、事実や現実と違う言葉について考察したいと思います。
人間は皮膚呼吸をしない
まず、第一番目に「皮膚呼吸」と言う言葉です。美容関係の情報には良く出てくる言葉ですよね。
皮膚呼吸をする生き物
現実に皮膚呼吸をする生き物がいます。それは、カエル等の両生類。
どのようにして皮膚呼吸を行うか?と言えば、皮膚表面を覆っている粘膜で酸素を取り込むようにして呼吸するらしいです。
人間の皮膚には呼吸する器官は存在しない
では、人間が皮膚呼吸をするのかどうかです。結論を言えば、人間は肺呼吸をするが、皮膚では呼吸をしません。そう言った器官は皮膚には存在しません。
もし疑問に思われるなら、今あなたの右腕の一部分をラップで密閉してみてください。
5分・・10分・・20分・・・・
いかがでしょう?密閉した部位が苦しくなったでしょうか?密閉した部位の皮膚に異常が見られたでしょうか?
医学的には、人間の呼吸量の中で皮膚で行われるのは1%未満だと言われています。
だから、皮膚呼吸を妨げて皮膚を悪くするなんてことはあり得ませんし、毛の生育を悪くするなんてこともあり得ないのです。
と言うことは、皮膚呼吸云々をおっしゃる情報提供者は、本当は何も知らないか、あなたを騙そうとしている、と言うことですね。
次に、「脱毛」です。
念のため、広辞苑で意味を調べてみました。「脱」とは、ぬぐこと、ぬけること、取り除くこと等々です。「脱毛」とは毛が抜けること。抜け毛。美容の為に不要の体毛を取り去ること。
以上が正確な意味ですね。
脱毛が進行するってどういう意味?
ところが、育毛剤や育毛製品の広告・情報等々を見ていると、よく出てくる表現に「脱毛が進行する」と言うのがあります。
これを、そのまま正確な意味に当てはめると、毛の抜けることが進行する、とか、抜け毛が進行するなんて意味になってしまいます。
抜け毛の本数が毛が無くなるまで増え続けるのでしょうか?ちょっと日本語としては、おかしいですよね。
脱毛の意味を捻じ曲げる
それと、先日の新聞に掲載されていた育毛剤の広告中で、「脱毛とは段々と毛が細くなって密度が薄くなっていくこと」なんて定義していました。
「え~。そんなのおかしいじゃないか!」と思いません?
脱毛には、ちゃんと日本人が共通して認識する意味があるのに、わざわざ意味を定義し直すなんておかしいですよね。
で、そこで私は考えました。
わざわざ正確な意味を捻じ曲げてまで定義するのは、育毛剤を売る為の広告として、どうしても「脱毛」と言う言葉を使いたかったからでは?ないかと。
脱毛して毛が無くなるのは円形脱毛症・びまん性脱毛症
現実に、相談室で色々な方の状態を拝見しますが、脱毛して薄くなっている人にお目にかかったのはたった二人です。
その方は、円形脱毛症とびまん性脱毛症でした。他の方は、
- 段々と毛が細くなっていき、
- 段々と毛が生育しなくなっていき、
- 段々と密度が広がり、
- 段々と本数を維持できなくなっているのです。
不安を煽る為に言葉の意味を捻じ曲げる
だから、正確には「脱毛が進行する」ことも「抜け毛が進行する」こともなく、進行するのは「薄い状態が進行していく」ことを言うのです。
言葉の本来の意味を捻じ曲げてまで表現するのは、単にその広告を見ている人の不安を煽っているだけで、何の役にも立たない情報なのですね。
言葉は、お互いが意味をちゃんと理解していることではじめて通用するものです。まさか、「右」と言っているのに「左」を向く人はいないでしょう?
86号で「円形脱毛症・びまん性脱毛症」と「普通の薄毛」を一緒にしないで。と書いたのは、「脱毛して毛が無くなるのは特殊な場合だけ」なのを分かって欲しかったからです。
となってくると、「発毛」と言う言葉も怪しい
「脱毛する」から薄くなる。だったら「発毛すれば」毛が増えるじゃないの?と言う意味合いが、「発毛」の言葉の裏にはあります。
「抜け毛を無くして発毛させる」と言う表現も、「毛が抜けるから薄くなる」ことがあってはじめて成り立つ話です。
相談を受けていますと、「本数が少なくなったのは、抜けて生えていないからだ」と訴える人も多いのですが、それらの人の頭皮を拡大して見ると、
毛が茂っている期間が短くなっているだけ
それから、相当進行して育たない毛が多くなってくると、本数が維持できていないだけで、決して発毛していないわけではありません。毛の茂っている期間が極端に短くなっているだけです。
これら現実と事実から考えてみると、「皮膚呼吸・脱毛・発毛・抜け毛を無くして発毛させる」と言う表現を使っているのは、本当に現実や事実を知らないか・お金儲けしか考えていないからだと思います。
ネット上だけでなく、よ~く新聞・雑誌等の特集や広告を読んで下さい。皮膚呼吸・脱毛・発毛・抜け毛防止、これらの言葉がどれだけ多いか!!
ちなみに、お金儲けが悪いと言いたいのではありません。ちゃんと事実や現実を知り、煽るような手法を取らずにお金儲けをしましょうよ。と言っているのです。
91号は平成19年(2007年)3月25日に配信したメールマガジンです。